中世ヨーロッパの城の門と城壁ってどうなってる?本を調べて考えてみよう

城塞の門について資料で調べてみよう

中世ヨーロッパの城というと、シンデレラ城やFF・ドラクエの城のようなイメージがあります

が、実際は僕らがイメージしているものとは、だいぶ違うようです

そもそも「城塞」というだけあって、戦争を想定して作られています

なので城は高い城壁に覆われ、ゲームやテーマパークのように簡単には入れないようです

トカゲネコ
トカゲネコ

華やかなイメージとは、かけ離れているようです

というわけで今回は資料を参考に、

  • 城門の構造について設定を組んでみよう
  • 城壁の裏側はどうなってるの?
  • 城門の傍らにある城塔の構造も考えてみよう

といった内容で書いていきます

ただ史実どおりに描いていくと、世間のイメージとかけ離れて読者が共感持てなくなるかもしれません

それに、考えていたストーリーと史実が嚙み合わなかったりすることも

あくまで史実の話ではなく、「史実の資料をもとに背景の設定を考えてみた」という内容です

ちなみに、今回参考にした資料はマール社の「中世ヨーロッパの城塞」という本です↓

【STEP1】城塞の門の構造について考えてみよう

城門と跳ね橋と落とし扉について

城門には何がある?

城塞は、容易に敵に攻め落とされないよう工夫された造りになっています

お城の周りは水堀で覆われ、城門の前にだけ橋で通れるようになっています

が、城門を通るには、城門塔から跳ね橋を落としてもらわないと通れない仕組みになっています

入口は「馬と馬車用」「歩行者用」とあります

中世ヨーロッパの城塞の城門

城門塔の傍らには「側防城塔」があってところどころに射撃口があり、そこから城壁の外を観察したり、弓を撃って敵に攻撃できます

城門塔には、門の上に「プレテーシュ」という穴の開いた囲いがあります

この穴から城塞の周囲を見はったり、弓・おおゆみを放って攻撃できます

プレテーシュ

プレテーシュには床がなく、下は開いてる状態になっています

ここから、下に向かって矢を放つことができます

トカゲネコ
トカゲネコ

門を通ろうとする敵に、上から攻撃!

跳ね橋や落とし扉について

城門塔の上の階には、跳ね橋を動かすための機械装置があります

レバーを回すことで跳ね橋につながれた鎖が巻かれて、橋を上げ下げできます

城門塔内部

通行人は城門塔の下の階を通っていきますが、途中落とし扉があります

これも、機械装置を回すことで上げ下げできます

画像に描いたのは、実際は落とし扉でなく、「器官」という中世後に使われた落とし扉に似たような感じのものです

落とし扉はこんな感じ

落とし扉

器官はこんな感じ

器官
トカゲネコ
トカゲネコ

器官のほうが、描く手間がかからなかったなぁ……

資料によると落とし扉を通った先に、床が突如開いて無数に生えたトゲの部屋に落とし、串刺しにするトラップもあるそうです

が、床が開く仕組みがわからなかったので、描きませんでした

画像では人と馬車と別々の通路にしましたが、扉は一つで、その扉に人用の小さな扉がついているというのもあったようです

城門の扉

【STEP2】城壁の裏側を考えてみよう

城壁を内側から見たら、どうなってる?

城壁の上を見てみますと、なんだか凸凹していますね

その裏側を見てみますと、

城壁の歩廊

このように歩廊があって、小壁体から隙間(クレノー)を覗いて城の周りを観察できます

ここから弓を放つこともできます

トカゲネコ
トカゲネコ

守りつつ、攻撃することを想定されているんだね

【STEP3】門の傍らの城塔はどうなってる?

城塔の中には何がある?

側防城塔の構造を考えてみました

先ほどの画像で、城門塔の傍らにあった「側防城塔」

階段を上がることで塔の中へ入れます

側坊城塔の入口とトイレ

また、城門塔の機械装置のある部屋の扉も、階段を上がったところにあります

城塔には「ガルドローブ」という空間があります

いわゆるトイレです

では、中を見てみましょう

側坊城塔内部
トカゲネコ
トカゲネコ

なんか、いろいろあるなぁ

あれこれ文字が書かれていてわかりづらいので、一階一階見ていきましょう

側坊城塔一階

一階は、食料庫となっています

この時代、冷蔵庫などはもちろんないので、保存のきく食料が保管されています

保存食については、あとで解説します

側坊城塔二階

二階は、娯楽室となっています

仮眠を取ったり、カードゲームを楽しんだりできます

側坊城塔三階

三階は、さきほど外観にあったガルドローブ(トイレ)があります

尻拭き用の麻を入れた箱も、傍らに置いてあります

トカゲネコ
トカゲネコ

紙じゃないんだね

そして、攻撃用の弓矢も保管しています

側坊城塔四・五階

四・五階に射撃口があります

もちろん、弓と矢の入った箱も置かれており、外敵を攻撃できます

歩廊への出入り口も、この階にあります

資料を調べることで、城の住人の生活空間を想定し、このように設定を組んでいけます

なんの知識もなく描いていこうとすると、なかなかイメージがつかないかと思います

今回参考にしたマール社の「中世ヨーロッパの城塞」

城門や城壁の構造のほかにも国による城塞の違いについてや、城塔の種類など、城塞についての情報がいろいろ学べます

中世ヨーロッパのお城の資料として、たびたび紹介されている本です

ぜひチェックしてみてください↓

中世ヨーロッパの保存食について

現代のような冷凍技術がなかった、中世ヨーロッパの時代

食料の保管はどうしていたのでしょう?

城に敵が攻めてくると、城門は固く閉ざされるので、

外からの物資が届かなくなります

なので、長く保存できる食料を貯めることが重要となります

トカゲネコ
トカゲネコ

食べ物は、たしかに大切

保存食について、少し解説していきます

塩漬け

樽のような容器に乾燥した塩を入れて、それに肉片を押し込み、さらに乾燥した塩を入れて肉を囲います

そして、また肉片を入れ、乾燥塩を入れ……と層状にして保存します

野菜もこのようにして保存されました

燻製

特に魚・豚肉の保存に使われていたそうです

肉を出来る限り薄く切り、塩溶液に少しのあいだ浸してから火にかけ、煙であぶります

ピクルス

水、塩、ハーブを入れた溶液も野菜を浸すことで、数か月保存しました

野菜に溶液がよく浸み込んだら、それを瓶や壺などに入れ替えて保存しました

ハチミツ漬け

果物をハチミツで密封することで、保存しました

果物だけでなく、肉もハチミツに入れて保存していたそうです

発酵

ブドウを発酵させることで、ワインが

ハチミツを発酵させることで、ハチミツ酒が

大麦を発酵させることで、ビールが作られました

ほか、羊やヤギの乳から、チーズが作られました

ただ、ビールはあまり長く保存はできないようです

ちなみに、ビールやワインといったアルコールは食事の際に飲まれていたのですが、水は衛生上良くないので飲まれなかったようです

なせ、良くなかったのかは、のちほど

中世ヨーロッパのトイレ事情について

ガルドローブの外観は、こんな感じ

中世ヨーロッパのトイレ

中はこのように便座のような石造りの椅子に座って、穴に排泄物を落とす感じです

中世ヨーロッパのトイレの内装

排泄物は、庭師が国で定められたゴミ捨て場に処理します

城塞にガルドローブが設置されたのは、11世紀頃とされています

(ここから汚い話が続きますので、不快に思う人は”まとめ”まで読み飛ばしましょう

「史実を学んでいきたい!」という人だけ読んでね)

トカゲネコ
トカゲネコ

ホント、汚い話になってしまうので、注意してね

中世ヨーロッパの比較的裕福な人は尻を拭くのに

  • 羊毛
  • レース

などを使っていたとされています

が、大昔の人々は主に川で用をたして、

  • 水で尻を洗い流す
  • 干し草
  • 海藻
  • 貝殻
  • リンゴの皮
  • 木の削りくず
  • 自分の手

などで拭いてたりしていました

有名な話ですが、中世ヨーロッパの一般市民の場合は用をたす際に壺のような入れ物を使い、ある程度たまると「排泄物投げるからみんなどいて!」と声をかけて窓から投げ捨てていたとのこと

中には、声掛けを忘れたり聞こえなかったりすることで、排泄物が通行人にかかってしまうこともあったようです

トカゲネコ
トカゲネコ

それは、いやだ……

実際は排泄物を捨てる場所がちゃんと決まっていたのですが、「排泄物の入った壺を持ち歩くのがめんどうだし、習慣が抜けない」

といった理由で守る人はほとんどいません

貴族の場合、宮廷に大理石や陶器で作られたトイレ専用の穴空き椅子があり、それがたまると、召使が庭に捨てていったそうです

あるいは、引き出し付きの穴空き椅子があって、たまると引き出しを出して庭に捨てに行ったとか

ほかにもパーティなどでよその宮廷を訪れた際には、カレールーを入れるのに使われる容器のような形のおまるを持参していたとか

それで、いつでも排泄できるようにしていたとのこと

また、穴空き椅子に座ったまま用をたしながら会議をしたり、食事をしたりもしていたそうです

トカゲネコ
トカゲネコ

食欲失せるわ……

ただすぐに庭が糞尿まみれになるので、貴族は10日ごとに自分の持つ宮殿・城を移動していたとか

汚くなった庭は、庭師が整備していたそうです

ヨーロッパでは豚を家畜として放し飼いしており、街の排泄物を豚が食べてくれていました

ですが、時代が進むと都市部に豚がいなくなって人が増え……

けれど排泄物を外に投げる習慣は残ったまま……

雨が降ることで排泄物が川に流れていったりもしたそうですが、当然、そうなると川が汚れてしまうことに

衛生上、水が飲まれなかったというのはこのためです

トカゲネコ
トカゲネコ

そんな水、いやだ……

排泄物だけでなく動物の内臓や生ゴミも投げ捨てられ

主に移動手段として使っていた馬の糞尿も放置されていたそうです

こういった状況のために、実は今でも使われているおしゃれアイテムが開発されていったといわれています

  • 汚物であふれた道を歩くために開発されたのが、ハイヒールとブーツ
  • 排泄物が窓からかけられるのを防ぐのに開発されたのが、日傘
  • 悪臭をごまかすために作られたのが、香水
  • また、庭の隅っこなどで、立ったままひそかに用を足すために作られたのがフープスカートです
トカゲネコ
トカゲネコ

今でも使われている、おしゃれアイテムばかり

作られた理由が、ひどい……

と、とても不潔だった中世ヨーロッパ

このため、

  • ペスト
  • コレラ
  • 黒死病

が蔓延してしまいます

トカゲネコ
トカゲネコ

そりゃ、そうなるでしょう

しかし時代が進むにつれ、ごく一部の富裕層にトイレが設置されました

その排泄物は専用業者が回収して決められたゴミ捨て場に運ばれるようになりました

そして、19世紀後半頃には下水道の設備が整い、どの家庭にもトイレが設置されるようになります

ペスト・コレラ・黒死病を食い止められていったとのことです

トカゲネコ
トカゲネコ

よかった、清潔になって

なんだか、トイレ事情ばかり長くなってしまったような気がしますが……

今回は城について取り上げたのと、ガルドローブが出てきたものだからトイレ事情を調べることとなりました

結果、上記のような情報が出てきたわけで

ただ、この時代にはすでに

  • ハイヒール、ブーツ、日傘、香水が開発されていたということ
  • さまざまな感染病が蔓延していた、ということ
  • 水は飲まれなかったということ

などは覚えておくと創作にいいかもしれません

まとめ:城塞の背景設定のおさらい

今回は背景の描画法の解説ではなく、資料を調べて背景設定を考えていくことについての解説でした

まとめますと、

史実を調べていくことで背景を描く参考になったり、物語の舞台設定がイメージできて、キャラクターの住む世界に生活感が出てきます

また、背景に説得力が生まれます

(たとえば、城門塔と跳ね橋について書きましたが、もし資料を調べずにイメージだけで城門と跳ね橋を描いたとします

結果、跳ね橋を動かす機械を設置する城門塔が描かれていない、城壁と跳ね橋のみの門ができあがった

じゃあ、跳ね橋はどうやって動いてるんだよ?」ということに)

資料を調べていって、物語に取り入れるべきものと、あまり取り入れるべきでないものを判別していきましょう

トカゲネコ
トカゲネコ

中世ヨーロッパのトイレ事情を史実どおりに取り入れちゃったら、「ベルばら」なんて売れなかったでしょうからなぁ……