『ヨハネの黙示録』について

 新約聖書の末尾、『ヨハネの黙示録』は、イエスの使徒ヨハネの幻視に基づく闘争神話。奇妙な怪物がいくつも登場するなか、 悪魔と思われるものが、海よりの獣地よりの獣大いなる赤き竜
 まず、最初の登場するのは赤き竜で、7つの頭と10本の角を持ち、その頭には7つの冠を被っている。 竜とはユダヤ・キリスト教を迫害する国や王の象徴、7つの頭は、エジプトやバビロニアなどの7つの国、10本の角は カリグラやネロなど10人のローマ皇帝、7つの冠は首都ローマを囲む7つの丘を指すという説があります。
 『ヨハネの黙示録』が執筆されたのは、キリスト教徒を弾圧した暴君、ローマ帝国第十一代皇帝ドミティアヌスの時代といわれています。

 続いて登場するのは、海中から姿を現す海よりの獣。10本の角と7つの頭、10の王冠を被っています。その姿は豹に似ており、足はクマ、 口はライオン、頭には神を冒涜する様々な名があるという。この頭・角・冠の意味するところは、竜とほとんど変わらないようです。
 竜は海よりの獣に自らの力と大きな権威を与えます。
 そして最後に登場するのは、地中から姿を現す地よりの獣。人々の右手か額に666の数字を刻みます。これは「獣の数字」と呼ばれ、 皇帝ネロの名のヘブライ語表記「QSRNRWN」のつづりに対応する数値の合計と解釈されています。キリスト教に伝わるカバラという魔術体系 では、姓名を数字に置き換え、計算結果の意味を解釈する占いを数秘術(ゲマトリア)と呼びます。

 『ヨハネの黙示録』は、ローマ帝国及びローマ皇帝による迫害と、それに抵抗するキリスト教徒の戦いを天上の堕天使との争いに仮託して描いたものですが、 先行して定着していたエデンの蛇の印章もあり、緋色の七頭竜という異形は魔王サタンの堕天した姿としてキリスト教徒たちに知られることとなります。
「モーセの黙示録」や聖書正典から外された外典偽典にはこの蛇をサタンと同一視する記述が散見されます。
(これらの文は『「堕天使」がわかる』坂東真紅郎[著]、『天使悪魔辞典』を引用)